30秒サイネージ動画の作り方|通行人に伝わる黄金構成テンプレートと制作の勘所

「テレビCM用に作った動画をそのまま渡したら、街頭ビジョンでは何を言っているのか分からないと言われた」——サイネージ広告の相談で、実際によくある躓きです。街頭ビジョンは、座って最後まで見てもらえるメディアではありません。駅前や待ち合わせ場所で、通行人が歩きながら1〜2秒だけ視線を向ける。その条件で伝わる動画は、テレビCMともWeb動画とも作り方が違います。この記事では、実際に放映される動画を日々見ている立場から、30秒動画の構成テンプレート、屋外特有の音声設計、入稿までの段取りを整理します。
◆この記事のポイント
- ✓街頭ビジョンは「ながら見」のメディア。15秒の動画でも通しで見てもらえる前提は捨て、1〜2秒見ただけで何の広告か分かる情報量に絞る。
- ✓30秒動画は「結論・問題提起(〜5秒)→商品説明(10〜15秒)→再度の結論(約5秒)→会社情報・購入先(約5秒)」の4パートに分けると型として機能する。
- ✓屋外は音が反響せず雑音もあるため、音声はYouTube広告の1.5〜1.7倍まで上げる。テレビCM素材をそのまま流すと音が小さく聞こえるのはこのため。
前提:街頭ビジョンは「ながら見」される
街頭ビジョンの前にいる人は、広告を見に来ているわけではありません。駅へ向かう途中、待ち合わせの合間、信号待ち。視線が向くのは長くて数秒で、しかもその数秒は連続しているとは限りません。ここがテレビCMやWeb動画との決定的な違いです。
テレビCMは家の中で観るもので、Web動画は再生ボタンを押した人が観るものです。どちらも「最後まで観る人がいる」前提で作れます。一方、街頭ビジョンは15秒の動画であっても、通行人が通しで見ることはまずありません。だからこそ、動画のどこを切り取られても意味が通る作りが必要になります。
15秒に情報を腐るほど入れても理解できない。1〜2秒で何の広告か分かる情報量に。— 鍵森将(株式会社グレイド 執行役員/サイネージ広告事業 責任者)
実務でいちばん多い失敗は、情報を詰め込みすぎることです。訴求点を3つも4つも入れた動画は、通行人には「結局なんのCMだったのか」しか残りません。逆に、商材と社名だけがはっきり分かる動画は、数秒しか見られなくても仕事をします。入れるものを増やすのではなく、削る作業だと考えてください。
30秒動画の黄金構成|4つのパートに分ける
尺は30秒が主流です。テレビCMと同じ尺なので素材を流用しやすく、それでいて商品説明を入れられるだけの情報量も確保できます。その30秒を、次の4パートに割り振ります。
- 1結論/問題提起(〜5秒):見た人が自分ごと化できる一言から入る
- 2商品説明(10〜15秒):要点は1〜2個に絞る。3つ以上入れない
- 3再度の結論(約5秒):冒頭で言ったことをもう一度だけ言い直す
- 4会社情報・購入先(約5秒):社名、サイト、QRコードなど次の行動先
ポイントは冒頭と後半で同じ結論を2回言うことです。通行人が視線を向けるタイミングはばらばらなので、結論を1回しか置かないと、そのタイミングを外した人には何も残りません。2回置くだけで、拾ってもらえる確率が上がります。
- 業種
- 男性向けアパレルブランド
- 商材
- 透け防止機能のあるメンズTシャツ
- 尺
- 30秒
男性が人前で気にしがちな「見え方」の悩みを扱った商材で、冒頭を「あなた、それ見られていますよ」という問いかけから始めています。次に、その悩みをこの商品が防ぐことを見せ、そのうえで機能(汗ジミが出にくい繊維であること)を短く補足し、最後に購入先を出す流れです。訴求点は「透けない」と「汗ジミが出にくい」の2つだけに絞られていて、通行人が途中から見ても、何を売っている広告かが分かる構成になっています。
15秒で作る場合は、この4パートをさらに圧縮します。「何の会社かを5秒」「その目的を5秒」「会社情報を5秒」の3ブロックです。15秒では商品説明を丁寧に入れる余地はないので、認知を取りにいく尺だと割り切ったほうが結果的にうまくいきます。
屋外の音声設計|テレビCMをそのまま流すと小さく聞こえる
見落とされがちなのが音です。テレビCMは室内で聴くもので、壁に音が反響し、視聴者が自分で音量を調整できます。屋外はその逆で、反響する壁がなく、周囲には車や人の雑音がある。同じ音量データでも、屋外では体感がはっきり下がります。
目安として、目の前を通る人に届かせたいなら、音声はYouTube広告の1.5〜1.7倍まで上げます。テレビCMやWeb動画の素材をそのまま持ち込むと「音が小さくて何を言っているか分からない」となりがちなのは、この差を調整していないためです。逆に、上げすぎて音が割れている素材が届くこともあり、どちらも放映前に調整が必要になります。
◆そもそも音が出せる枠かを先に確認する
街頭ビジョンで音声を出せるのは全体の約7割、さらに音量が十分に出せる枠は約3割です。音声の可否はビル側の合意と条例で決まるため、ビジョンごとに違います。ナレーション前提で動画を作る場合は、出稿先が音を出せる枠かどうかを制作に入る前に確認してください。字幕・テロップだけでも成立する構成にしておくと、枠を変更することになっても作り直しが要りません。
動画データでつまずく2つのポイント
1つめはサイズと比率です。ビジョンは16:9とは限らず、拠点によって形が違います。比率の合わない動画を無理に引き伸ばすと、人物が横に伸びた状態で街に映ることになります。出稿先が決まった時点で、そのビジョンの比率を制作側に伝えてから作り始めてください。
2つめは、修正依頼の伝言ゲームです。広告主・代理店・映像制作者・媒体社と関係者が多いため、「ナレーションの音量を上げてほしい」という依頼がBGMだけ大きくなって返ってきたり、比率の指定が引き伸ばしで処理されて返ってきたりすることが実際に起きます。動画に関する修正は、担当者を経由するより編集した本人と直接やり取りしたほうが、結局は早く正確です。
- 業種
- 飲食店(串焼き)
- 動画の工夫
- 英語ナレーション・英語テキスト・QRコード
- 結果
- 「渋谷のサイネージを見た」外国人の来店が複数件
渋谷で放映した飲食店の事例です。日本語のナレーションではなく英語のナレーションとテキストを載せ、画面にQRコードを置きました。結果として「渋谷のサイネージを見た」という外国人客がQR経由で複数件来店しています。誰に見せたいかが決まっていれば、動画に載せる言語も、置くべき導線も自動的に決まるという例で、尺や演出よりも先に決めるべきことがどこかを示しています。
制作から放映までの段取り
動画は「作ってから出す」ものなので、放映開始日から逆算して動きます。ミチビトの場合、入稿は毎週月曜、放映開始は翌週の月曜という運用が基本です。ここに掲載審査と、必要に応じた修正のやりとりが乗ります。
- 1出稿先の拠点を決める(ターゲット・音声の可否・ビジョンの比率がここで確定する)
- 2構成を決める(30秒なら上記の4パートに割り振る)
- 3放映の2週間前までに初稿を用意し、審査に出す
- 4審査の結果と音量・比率の調整を反映する
- 5放映週の前の月曜に最終データを入稿する
- 6翌週の月曜から放映開始
放映が始まったあとは、業界標準の1時間ロールで繰り返し流れます。同じ動画を長期間流し続けることになるので、制作段階で季節や期限に依存する表現を入れすぎないほうが、結果的に長く使えます。キャンペーン告知を入れる場合は、終了後に差し替える前提でスケジュールを組んでください。
まとめ
サイネージ動画は、テレビCMやWeb動画の縮小版ではありません。通行人が1〜2秒しか見ないという条件から逆算して、情報を削り、結論を2回置き、屋外に合わせて音を作り直す。30秒なら「結論・問題提起→商品説明→再度の結論→会社情報」の4パートに割り振るところから始めるのが、いちばん手戻りの少ないやり方です。
ミチビトは渋谷センター街・歌舞伎町・高田馬場・新大久保・三軒茶屋の都内5拠点を扱っており、映像制作出身の担当者が音量調整や比率の調整、構成のご相談まで対応しています。すでにお持ちの素材が屋外で通用するかを見てほしい、というご相談でも構いません。まずはお問い合わせからご連絡ください。掲載審査で気をつける点はサイネージ広告の審査基準、媒体そのものの仕組みはデジタルサイネージ広告とはにまとめています。
よくある質問
Q.サイネージ広告の動画は何秒で作るのがよいですか?
A.30秒が主流です。テレビCMと同じ尺のため素材を流用しやすく、商品説明を入れる余地も確保できます。15秒で作る場合は「何の会社かを5秒/その目的を5秒/会社情報を5秒」に圧縮し、商品説明を詰め込まず認知獲得の尺と割り切るのがおすすめです。
Q.テレビCMやYouTube広告の素材をそのまま流せますか?
A.データとしては使えますが、そのままでは音が小さく聞こえます。屋外は音が反響せず雑音もあるため、音声はYouTube広告の1.5〜1.7倍まで上げる調整が必要です。あわせて、ビジョンの比率に合わせたリサイズと、出演者・BGMの屋外利用に関する権利確認も必要になります。
Q.動画に入れる情報はどれくらいに絞るべきですか?
A.1〜2秒見ただけで何の広告か分かる量まで絞ってください。街頭ビジョンは「ながら見」されるメディアで、15秒でも通しで見てもらえる前提は成り立ちません。訴求点は1〜2個までにし、結論は冒頭と後半の2回置くと、視線を向けるタイミングが人によってずれても伝わります。
Q.動画はいつまでに用意すればよいですか?
A.放映の2週間前には初稿を用意しておくのが安全です。ミチビトでは入稿が毎週月曜、放映開始が翌週の月曜という運用が基本で、そこに掲載審査と音量・比率の調整が加わります。修正が必要になった場合の余裕を見込んで逆算してください。